2025年6月15日号 オーラルフレイル

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  • オーラルフレイル英語の「Oral(口腔の)」と「Frailty(弱さ、もろさ、はかなさ)」を組み合わせて、口の三大機能「噛む」「飲み込む(嚥下)」「しゃべる」などの口腔機能が衰えることを「オーラルフレイル」と呼んでいます。

    フレイルには進行の程度によって段階があり、オーラルフレイルは、心身全体のフレイルの初期に現れ、最初は小さな変化のため見逃しやすいのですが、早めに気づき適切な対応をとることで改善が期待できます。
    オーラルフレイルと身体的なフレイルは相互に密接な関係があり、症状に気付いたら放置しないことが大切です。

  • 口の衰えから全身の衰えへ

    高齢期になると社会的な環境も変化します。仕事をリタイアして働く場での役割がなくなると、しだいに地域の活動へも消極的になり健康への意識も薄れてしまいます。
    これが「オーラルフレイルの概念」の第一段階『口の健康リテラシーの低下』です。
    そして、第二段階『口のささいなトラブル』へ移行します。飲み込みにくい、かたいものが噛めない、食べこぼし、わずかのむせ などがそれにあたります。

    オーラルフレイル度をチェックしてみよう!(2つ以上あてはまる場合「オーラルフレイル」)

    第三段階では『口の機能低下』、第四段階は『食べる機能の障がい』へと進みます。
    このレベルから身体的フレイル(虚弱)に対する影響も増大していきます。

    「歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版」(東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢 作図)

  • 『口が衰える』とは

    むし歯や歯周病などの歯の病気が口の機能を衰えさせるのはもちろんですが、他にも「口の筋肉の低下」や「唾液の減少」も大きな原因となります。食事中にむせるおじいちゃん
    私たちは食事をするとき、話すとき、口の入り口である口輪やほおの筋肉、そして舌を上手に連動させています。
    とくに舌は筋肉のかたまりです。食事中にむせることが増えたと感じる人は口の筋肉が弱ってきたサインです。

    そして唾液には食べ物の消化を助けたり、口の粘膜を保護する働きがあり、その他にも、口腔内の汚れや細菌を洗い流してむし歯や口臭を防いだり、再石灰化を促してむし歯になりにくくする効果があります。
    そのため、唾液の分泌量が少なくなると口腔内の衛生状態が悪化しやすくなり、むし歯や歯周病など歯を失う病気の進行や口腔機能の低下・・・と、負の連鎖は続きます。

  • オーラルフレイルがもたらす影響

    食への欲求・関心が減少し、人生の楽しみのひとつである食事への満足度が低下します。
    そうして食欲や食事量が低下すると、栄養不足からの全身の機能低下へと進み、要介護状態へとつながる可能性があります。

    また、滑舌が悪くなることで、他者との交流が円滑に行えなくなり、社会参加の側面からも弱ってしまいます。
    オーラルフレイルは、身体的なフレイルだけではなく、精神面や社会性にまで影響を及ぼし、さまざまな機能がドミノ倒しのように弱くなってしまう悪循環を引き起こします。

  • オーラルフレイルの予防・対策

    バランスのとれた食事1. バランスの良い食事
    ・1日3食、よく噛んで食べましょう。
    ・筋肉の基になるたんぱく質や、たんぱく質の吸収を促すビタミン類を意識して摂取しましょう。

    2. 歯と口の定期的な管理
    ・正しい歯みがきでむし歯や歯周病を防ぎましょう。
    ・かかりつけ歯科医院で定期的に検診を受けましょう。
    むし歯や歯周病の早期発見・治療で、残存歯数を維持しましょう。

    3. 口腔筋トレ
    ・口腔機能の改善に、口周りの筋肉を鍛えて唾液の分泌や飲み込むのに必要な筋肉を鍛えたりする“口腔体操”を取り入れましょう。パタカラ体操
    「音読」や「カラオケ」なども効果的です。唾液分泌を促すガムを噛むのもお口の運動につながります。
    もちろん、体を動かし全身の筋力維持・筋力アップは心身全体のフレイルの予防になります。

    お年寄り同士のコミュニティ4. 社会参加
    ・趣味の仲間を持って交流したり、孤食・社会的孤立・閉じこもりにならないようにしましょう。

     

    参考サイト)一般社団法人 日本老年医学会:https://www.gerodontology.jp/committee/002370.shtml 他